しばしばオフトン

ゲーム、旅行記、医学、4コマ漫画。

イソジンでうがいするとどうなる。

スポンサーリンク

 4日、大阪の知事が「イソジンでうがいするとコロナウィルスの陽性者が減っていくという研究データが出た」と目をキラリと輝かせイソジンを握り締め会見していました。で、その後、すごい勢いで炎上してました。

 何がまずかったのか。この研究データ、まだ研究段階の速報みたいな奴で、信憑性がすごい弱くて、内容もふわっとしていて解釈の仕方も色々されてしまうやつです。そんなふわっとしたやつを、影響力のある知事が目をキラリと輝かせて伝えてしまったことに問題があるんだと思います。

 誤解がないようにと思いますが、私は、イソジンでうがいしても意味がないとは思っていません。意味がないかもしれないし、あるかもしれない。イソジンでうがいすると、コロナ対策になるかもしれないし、コロナがもっと広がる原因になるかもしれないし、コロナは治っても他の病気が増えるかもしれないしと思っています。つまり、この研究データだけではまだ何にもわからない状況です。例えば私が突然「ラーメンをたくさん食べる地方ではコロナの人が少ない」とか言い出したとして、その瞬間ラーメン万歳日本中の人全員ラーメンを毎日食べようという話になるかというと、ならないわけで、そこは「そういうならもう少し調べてみてくださいね、そしてまた教えてくださいね」とそういう感じです。

 イソジンは消毒薬なので、イソジンでうがいすれば口の中のコロナウィルスは一時的に殺菌されますよね。その状態で唾液をとって検査をすれば、そりゃあウィルスの量は減ってるわけですから、陰性、と出る人は増えるでしょうけど、それで治ったとか治るのが早くなったというのは飛躍がすごいわけです。

 大阪の知事はこんなフワッとしたデータを検証なく急に言い出した釈明として、「今現在も感染者が増え、特効薬がない中で、どこでも手に入り、副作用のないうがい薬。これにコロナの重症化を予防する効果があるのであれば、命を救うことができる。何もしないよりも、試していただくメリットの方が多い」と言っています。

 第一に、副作用がないから、ってことでしたけれど、イソジンは甲状腺機能低下を起こす可能性があり副作用があります。な、なんで副作用がないって言い切ってしまったの。医療者はそばにいなかったの。特に妊娠中に甲状腺機能低下が起こると、赤ちゃんの発育に関わりますので、妊娠中の方は避けた方がいいと思います。

 ただ副作用よりも、私が一番気になるのは、仮に、イソジンうがいが検査で陰性を増やすだけで、実際治す効果がまったくないとしたら、本当はコロナにかかっているのにPCRでコロナじゃなかったですよーっと言われる人が増えるだけの状態が生まれることです。それは明らかにデメリットですよね。ヤバイですよね。

 例えば、陽性の結果が出て欲しくない人、つまり仕事を休みたくない人とか、自分の店でコロナ陽性者を出したくない人とか、そういう方やお店が、検査直前にイソジンでうがいするようになったら、陰性証明を得る手段として利用されてしまう可能性があります。そしてコロナにかかったまま、仕事を続けてしまう。そして広がっていく。

  

 ということで、そういう危険なデータですので、今回、炎上してるわけですけど。じゃあ、イソジンは絶対ダメなのかと言われると、ダメという証拠もないわけですよね。

 会見では希望あることも言っていて、コロナウィルスを口の中だけでも量を減らすことができれば、高齢者の肺炎を減らせるかもしれないという理論もおっしゃってました。それはありえると思いました。

 高齢者は唾液を誤嚥して肺にバイキンが届いてしまい、誤嚥性肺炎を引き起こします。なので、オーラルケア、口の中を綺麗にすると誤嚥性肺炎が減るというのは確実なデータとしてありますので、コロナウィルスを減らせれば、誤嚥してコロナ肺炎を減らす可能性が減る、というのは道理です。ただ、もちろん、それが証明されたわけではないので、全然減らない可能性もあります。誤嚥性肺炎とウィルス肺炎は違う病気ですから。また、ウィルスはすぐ増えるので、効果を出すには例えば10分に1回ヨードでうがいしないといけないかもしれません。「唾液の飛沫で感染が広がるのだから、唾液中のウィルスを減らすだけでも感染予防になるのでは」という意見もありますが、これも同じ理由でどのくらい予防になるかはわかりません。

 

 ということで、わからない…わからない…と空な目で言い続けたわけですが。でも、書いてて思いました。今回のこのコロナ流行を経て、感染症専門医とか、有名な医療者の人たちが、ドヤ顔で「エビデンスがないからまだわからない」という姿をたくさんみてきて、何だかそれにも疲れましたよね…。私も今回そういう感じになってるわけですけれど…。

 「データが少ないからわからない」というのは、そりゃあ新しい病気だからその通りで仕方がないんですけれど、似た病気からの知識とか、専門家としてのカンとかで、「この可能性が一番高い気がする、めちゃくちゃカンだけど、当たる確率は10パーセントくらいのもんだけど多分こんな気がする。一か八か僕そう思う」とかそんな感じでもいいので、意見を言ってほしいですよね。それが専門家ってもんじゃないですか!と。

 でもなあー!そういうフワッと意見を言ってしまったがために、今回の炎上が起こってるわけですし…。専門家ほど、はっきりと言えないのは仕方ないのかもしれませんね。そうですよね…。間違った方向に進むよりは、進まないほうがいいのかもしれない…。