「さて、ミイホンさん、午後はカヤックで遊びましょう」
「楽しみだねえ」
「問題は俺が腕が折れていることだけど、大丈夫かねえ」
カヤックに乗りたい
さて、モルディブと言えば当然、海!
海と言えば当然、マリンスポーツ!
マリンスポーツと言えば、カヤック!ですよね!
(引用:https://www.milaidhoo.com/things-to-do/watersports.html)
こういうの。
右腕が完全にその機能を失っている私ですので、モルディブ旅行中のマリンスポーツはやや諦めていたのですが、これならもしかしてやれるかも、と思ったのです。
「島の端っこの店に行くと、レンタルで貸してくれるらしい。いってみましょう」
「はい!」
カヤックを借りる
島の端っこにある、レンタルショップみたいなところにたどり着きました。
「ハーイ!マリンスポーツ?」
「イエス!カヤックプリーズ」
「オッケー・・・オウ・・・!?」
店員さんに、元気よく「私はカヤックに乗りたいです」とお伝えするも、私の右腕を見つめて訝しげな様子です。
気持ちはわかります。わかりますよ店員さん。
「イエス、マイアーム、ブロークン、コンプリートリー」
「・・・」
「でもカヤック アイウォント カヤック」
「ペラペラペーラ?」
「緊急事態を目の前にして、急に我を忘れて流暢に話し出したぞこの店員さん。何言ってるかわからないけれど、不思議と理解ができる。つまりそれで乗れるの?ってことでしょう」
「マイワイフ 運転 漕ぐ イケル」
「エヘヘ」
「Oh...」
ジェスチャーで私の妻が私の分まで漕ぐから大丈夫なんですよと伝えると、「そうなんだ・・・」みたいな言語の壁を超えて伝わってくる戸惑いの表情を浮かべながら、とりあえずこちらに来い、と誘導してくれました。
「コレデース」
「わー結構大きいねえ!これなら転ばなそうだね」
「これは楽しそう!」
絵で書くと、二人乗りのこんな感じのカヤックでした。
絵と唯一異なる点と言えば、私が焦げないので、ちょこんと座るだけになるということですが、逆に私は写真を撮るなどの仕事に専念することができそうです。
「オワッタラ ココニオイテオイテネ ジャア・・・」
「よーし!出航だ!ミイホンさん!」
「大航海の始まりだよ!」
訝しげにこちらを見つめる店員さんを尻目に、二人は船出するのでした。
たのしいカヤック
「ハアハア ハアハア」
「すごい綺麗だねえ 波が無くてよかったよ!」
「うん、そうだね ハアハア すごい重いこれ」
「大丈夫かね?」
「うん、だい、じょう、ぶ」
「あっ橋にぶつかるよ!!ミイホンさん!面舵いっぱーい!」
「えええ面舵ってどっち!?あああぶつかるー!!」
「オアアアア!!!デンジャー!!デンジャー!!!」
そんな感じで大騒ぎしながら、船旅を楽しみます。
島の周りの施設を海側から見つめたり、魚の群の上を通ったり。
泳げなかった私ですが、モルディブっぽいことが出来てとても嬉しかったです。
でも、その幸せも。
・・・・長くは続きませんでした。
海の上で、一旦カヤックを止めて、ミイホンさんの休憩もかねて写真撮影をしている時のことでした。
「カシャカシャカシャ、みて!魚が撮れた!」
「・・・」
「あっ、そっちから私撮れる?!」
「ミイホンさん」
「ん?」
「大変なことになった」
「えっ」
「酔った」
「ええええ」
船上の悲劇
「吐きそう ミイホンさん 上陸を お願いします」
「も、戻るよ!!」
青ざめた私に気づいたミイホンは再びオールを握り締めます。
ギコギコ!ギコギコ!
「ミイホンさん 一刻も早く 上陸を」
「うおおーん!」ギコギコ!ギコギコ!
「・・・おおお・・・おお・・・」
「ハアッハアッハアッ」ギコギコ!ギコギコー!
ソロ ミイホン
無事上陸を果たした私は倒れこむように砂浜に腰を下ろしました。
「ありが・・とう・・・助かった・・・」
「はあはあはあはあはあはあはあはあ良かったよ・・・間に合って・・・はあはあ」
「すまない・・・俺にもっと力があれば・・・」
「大丈夫?部屋戻る?」
「いや、この辺で休んでるから、ミイホン、せっかくだからもうちょっと遊んできてよ」
「うーん・・・わかった、ちょっと一人で行ってみるね」
一人出航するミイホン。
その姿を見つめながら、私は気づいたのです。
「・・・すごい!さっきまでが嘘のように!速い、速いぞミイホン!」
「めちゃくちゃオールが軽い!!風のように進めるよ!」
「そうか・・・これがカヤックの正しい姿・・・!」
ミイホンさんがスイスイと船旅をするのを見つめて、二人乗りなら二人で漕ぐのが正しい姿、一人で乗るなら一人で漕ぐのがちょうどいい姿だと気づきました。
そりゃ二人分の重さを乗せて漕ぐのは大変だったよな・・・ミイホン・・・すまねえ・・・不甲斐ない俺を許しておくれ・・・!
「ひゃー!楽しいー!!ちょっと向こう側まで行ってくるね!」
「おーじゃあ俺も元気になってきたから、砂浜から併走するわ!」
そういう感じで、海と砂浜で併走する散歩で遊んだのでした。
なんだかんだめちゃくちゃ楽しかったです!
返却!カヤック
「オーオカエリー タノシカッタデスカ?」
「イエスイエス エンジョイしました〜」
「ウデ、ダイジョウブだった?」
「ヒーイズヘビーでした」
「アッハッハ ソウデショウ」
店員さんもそうなると思っておりましたよ、みたいな感じで笑っておりました!
今後腕が折れた状態でカヤックが楽しめるかどうか悩む方がいたら、私からのアドバイスとしては、妻の優しさと筋力に負担をかけるのでオススメしないということですが、いい思い出にはさせてもらいました!!!
「ありがとうありがとうミイホンさん」
「いんだよ。そういえば、明日なんだけど、さっき見てて思ったんだけど」
「うん?」
「この無人島ツアーっていうの、行ってみたくない?」
「へえ!船で別の無人島に行けるツアー・・・!すごいやん!この小さな島からさらに無人島にわたるなんて、なんという贅沢!申し込んでみましょう!」
「やったー!」
ということで、次回よっしゃーそれいけモルディブ旅行!
「無人島に行くならば?」
お楽しみに!