ある日ツイッターを見ていると、こんなツイートがあった。
もうわたしはグーグル・アースで旅をすることに決めた。ありがとうグーグル。オッケーグーグル。
— かおりしゃん (@kaorishan_dqx) 2017年9月15日
「天才か!」
グーグルアースで旅をする。
「忙しいこの日常。なかなか旅行なんて行けないなと諦めかけていたけれど」
「グーグル・アースがあれば世界中どこでもいけるじゃないか!」
グーグルアースは、世界中の地図とか写真を収めたなんかそういう凄いサイト。
これを使えば海外にだってほんの数秒で行った気になれます。
行った気というかもうほぼ行ったのと同義くらいの体験ができます。
完全に旅行です。
むしろ、煩わしい飛行機の待ち時間とかそういうものを一切キャンセルできるので、旅行をやや超えているという感すらあります。
さっそく、60円のカップコヒーヒーを購入。
お気に入りのヘッドフォンを装着し、流す曲は「小さな恋のうた」。
「広い宇宙のー♪数あるひっとっつー♪」
さて、そんな感じでテンションも最高潮、イコプの旅が始まりました。
旅立ち
まずは目的地を決めます。
グーグルアースを起動します。
「よっしゃよっしゃー!この地球どこだっていける!さあどこに行こうかな!」
こういうとき、グーグルアースはIm feeling luckyという機能があるようです。
これを使うとランダムで適当にどこかに連れて行ってくれる便利な機能。
「これだー!さあ今日の俺の旅先はどこかなー!ポチっ」
カジンガ水路に行く
「・・・・」
「カジンガ水路・・・?聞いたことないな・・・・」
グーグルアースは私の初の旅の目的地に、まったく聞いたこともない謎の水路を提案してきました。
まったく聞いたこともない水路に向かって旅立とうとするトラベラーは世界広しといえどもなかなかいないと思うので、イコプさんはこの時点ですでにトラベラー上級者の仲間入りといったところでしょう。
「せっかくだからネットで調べてみよう」
旅行の前に、その土地の観光名所とか、名産品とか、その町の歴史とか、いろいろ調べる。
これも、旅行の醍醐味だったりしますよね!!!
せっかくなので、この水路にまつわるいろいろを知識として持ってから、旅立つことにします。
現地で「あー!これがあの有名なナンチャラ遺跡!」とか「このバナナが世界一甘いと言われるウンチョゴバナナか」とかそういうアレにつながるかもしれませんから。
オッケーグーグル!
ウィキペディアが出てきました。
やはりグーグルアースが太鼓判で推してくるだけの名地、カジンガ水路。
この情報をまとめますと、以上のことがわかりました。
クィーン・エリザベス国際公園の一部
主にカバとワニがいる
炭疽菌でカバが多数死ぬ
「・・・・」
「めっちゃカバとワニがいて炭疽菌に注意」
旅立ちのとき
さあ、めっちゃカバとワニがいて炭疽菌に注意する場所に旅立ちます。
そんな旅行あるかな?とやや不安になりますが、旅に少々のリスクはつきものです。
「カバとかワニに会えたら楽しそう」
と逆にカバとかワニに会うことを今回の旅の目標とすることにしました。
一応、旅立ちの前に家族に連絡しておきます。
突然の旅行報告にやや妻も合点がいかない様子でしたが、きっとお土産話を楽しみに待っていてくれるでしょう。
では、行きましょう!グーグルアース!オン!!!
ズワアアアアア
!!!
「こ、ここは・・・・!荒地!!!」
上空から見ますとこういうところでして、どうやら遠くに見えるのが水路のようですね。
「水路っていうから水が流れる遺跡みたいなのを想像していたけど・・・完全に川のレベルだった」
でかい川と荒地が広がるその地域。
やや不安になりながらも、探索を始めます。
「・・・・」
「なんもない」
旅の終わり
見果てぬ荒野。
はるか遠くに時々見える、水路の片鱗。
目を閉じて、耳をすませば、わずかにカバの鳴き声が聴こえるような気がした。
十数分のドライビングを続けたが、私の眼前に広がる景色にはただただ荒地が続いていた。
広く、人知の及ばない大きな世界という存在ー。
それを知れただけでも、この旅はとても有意義なものだったんじゃないかな。
そう思い、私が帰国を考え始めたその時。
何気なく振り返った私の後ろに、驚きの光景が広がっていたのだ。
私は一人じゃなかった。
「誰!?」
「やあイコプ。僕はジミー。ずっとそばにいたよ」
「ジミー!そうだったのかずっと一人旅だと思っていたけど、君の車で僕は旅行していたんだね」
「ハッハッハそうさ。だって君は国際免許をもっていないだろう?」
「確かに。ちょいちょい車のカゲが映ってたので車で移動してるとは思ってましたが」
「ハッハッハ!イコプはうっかりさんだなあ!」
「ところでジミー、下半身がないみたいだけど大丈夫ですか?」
「そうさ・・・もう、時間がないみたいだな・・・」
「ジ、ジミー!お前・・・!消えて・・・!」
「イコプお前と過ごしたこの旅・・短い間だったけれど・・・とても楽しかったぜ・・・」
「ジミー!!!」
「このカジンガ水路で過ごした時間のこと・・・忘れないで・・・くれよな・・・・あばよ・・・イコ・・・」
「ジミー・・・ジミー・・・・!」
ジミーは消えた。
そして私は気付いた。
私は一人じゃなかったってことに。
そうさ、人は一人じゃあ生きていけない。カジンガ水路はそれを私に教えてくれたんだ。
私は、荒れ果てた大地の中で、空を見上げた。
水路から吹きすさぶ湿った風にのって、かすかに、ジミーの笑い声が聞こえたような・・・
そんな気がしたんだ。