前回までのあらすじ
46億年前・・・。宇宙空間に漂う塵のような分子達は、精緻な物理学の法則に従いながらも、それはまるで形而上的な奇跡のように集合し、一つの惑星を作った。のちに「地球」と呼ばれることになる、その(中略)
「スパムむすび美味い」
ハワイ島観光へ
「さてそういうことで元気よく観光に行こうかね」
「どこに行きましょうか」
「ここは常夏のハワイアンマスターイコプさんに任せてくださいよ。実は私が極秘ルートを通じて入手した、これさえあればハワイ島を通常の100倍楽しむことができると言われる伝説の地図があります」
「さっきフロントの人がくれたパンフレットだね」
「この地図によると、今我々がいるところからすぐのところに綺麗な海岸があるようです」
「綺麗な海岸!もうすぐ夕方だし、サンセットも見えるかもしれない。行ってみるしかないね!」
ということで我々は夕焼けてくてくと海岸まで行ってみました。 その日は結構曇っていたので、あまり綺麗な夕焼けは見られないかもしれないと思いましたが。
「ホォー!」
「こいつぁお美しい!」
どこまでも雑音のない、混じりけなしの海の音。
太陽は雲の合間からカーテンのように揺らめく光線を落とし、
静かに、静かに沈んでいくのでした。
私たちは言葉を失い、視界全体に広がる海と空を見つめていました。
少しずつ、世界が橙色に染まっていく。
その中で、西日に照り返される妻の瞳は少し潤んでいるようにすら見えました。
私はその横顔を見つめながら、意を決して、声をかけました。
「ミイホンさんや」
「うん」
「はらぺこである」
「そろそろだとは思っていたよ」
夕ご飯を食べる
さて、さっそく近辺で最強に美味いであろうレストランを探します。インターネットで調べてみますと、上の地図の矢印のところに地元の人も愛するような美味しいレストランがあるとのこと。歩いていけそうだったので、浜辺を散歩がてら歩いて行ってみることにしました。
すると途中に脇道を発見。
「なんだろうここは面白そうだよ」
「立て札があるね」
PROCEED AT YOUR OWN RISK
「ふむふむここから先は進んでもいいけど何があっても責任はとらないよってことだね。えっ何。どんなリスクがあるってのこの先に」
「冒険の予感がするね!」
ということで「もしかして熊とか出るのかな」とドキドキしながら進みます。
なんだか道が細くなってきて、
「うひょー!怖い怖い!細い細い!ゼルダの伝説みたい!」
「ヒャー!怖楽しい!写真とって!写真とって!」
ということで熊は出ませんでしたし、もちろん池にも落ちもしませんでした。
ということでかなり遠回りしながらたどり着いたレストラン。
Napuaという名前のレストランだそうです。
店内では「凄腕ミュージシャンです」というようなオーラの凄腕ミュージシャンがウクレレの生演奏をしていました。
頼んだのは、マグロのステーキ的なもの。
「表面は香ばしく焼けているのに中は新鮮な刺身のよう!」
「こいつぁ美味しいね!!」
「日本ではなかなかお目にかかれない料理だね!さすがハワイ!!」
と大興奮していましたが、帰国して父親にこういう料理を食べたと伝えたところ「なるほどカツオのタタキだな」と言われまして「確かに」と思いました。さすが日本。
ハワイ島二日目
「今日はレンタカーで島を巡ろうじゃない」
「は、はい」
日本にいる時から、ハワイ島ではレンタカーを借りてみようと話をしていましたが、ついにその時がやってきました。
もちろんハワイはアメリカのアレなんで、左ハンドルかつ右車線通行です。 ホノルルにいるときから、ドキドキしながら少し信号とか標識を見ていましたが、なんだかよくわからない標識とかもあったので、ほんまに運転できるやろか・・・と少しおびえていました。妻には秘密で、前日の夜から一生懸命インターネットで標識とか覚えていました。
(赤信号でもこの標識があるときは右折できるのね・・・ふむふむ・・・なんでそんなヤヤコシイ標識を作ったんや潔く青矢印とか出してくれよ・・・)
そんな感じで緊張しながら、レンタカーを借りにいきました。
レンタカーはホテルの中で借りられます。
「はーぃ!グッドモーニーング!」
「レンタカーを貸してください!」
「おーおっけー!レンタカー1日ネー!保険はドウしますかー?」
「えっ保険?」
「エランデクダサーイ。このプランだと車の修理に10万ドルまで出るねー!対人事故だと100万ドルまで出マース」
「そんなにすごい保険つけなくても大丈夫じゃ・・」
「一番すごいのつけてください!!」
「・・・」
「今日は本当一か八かだよミイホンくん」
ということで1日運命を共にする愛車、命名「ラスト・フリーダム」を手に入れました。
「しょっぱなから、なかなかワイルドに汚れているね」
「謎の草がいっぱい付いているよ」
「おっけーナビのセット終了シマシター!イッテラシャイネ」
ということで鍵をもらいました。鍵をもらう時に、「ガソリンがフルねフル」みたいなことを言っていたのですが、「今満タンになってるよ!よかったね!」ということなのか、「返すときは満タンにしてね?」ということなのかはよくわからなかったのですが元気よく「フル!オッケーイ!」と返事しました。元気よく返事することが大事と小学校くらいの頃に習っていてよかったです。
いざ!出発です!!
右側運転めっちゃ怖い
「・・・・!!・・・・!!!」
「ちょ、ちょっと、右に寄りすぎじゃない?」
「・・・・!・・・・!!!」
「寄りすぎ!寄りすぎ!ほら!ガコンガコンって言ってる!ライン超えてるよ!」
「・・・・!!!!慣れてきた・・・かも・・・!」
「慣れてない!あああ右怖い!右寄りすぎ!ああああ!」
朝食は50km先
ということで、インターネットで探した美味しいハンバーガーの店を目指します。その距離50km。ほぼまっすぐな道なのですが、命からがら到着。冷や汗かきました。
「ついた・・・やっと・・・」
「はらぺこだよ!やっと食べられるー」
「おっまってミイホンさん!見て!」
「うん?!」
「オープン11時からだって」
「50km来たのに?」
まだその時時刻は10時前。
1時間待ちぼうけするのは勿体無いし何より我々ははらぺこです。
お腹がすくと不機嫌になる性質を持つ我々は旅を成功させるためにも1秒でも早くご飯を手に入れる必要があります。
「ちょっとだけ戻ると、コナジョーコーヒーっていう有名なところがあるみたい。そこでご飯も食べられるみたいだから、行ってみよう」
「グッドアイデア」
すこし来た道を戻りますが、見つかりません。
「あれ?ないよ」
「もう通り過ぎちゃったんじゃない」
「・・・もう一回Uターンしてみる」
「うん」
言葉少なくなっていく我々。
すでに空腹は限界です。
何度かの往復ののち、細い道を見つけて、見つかりました。 コナジョーコーヒー。
そこはすごく開けた山の上みたいなところで、遥か海まで山の上から見下ろすような、展望台のような店でした。しかし空腹が限界となっている我々はとりあえず注文に向かいます。
「ハローハロー」
「オーお客さん!いらっしゃいねー!何にしますかー!」
「えーっとコーヒー1つと・・・」
「コーヒー!ね!お客さん店の入り口にあった5つのサンプルは試しましたかー!?おいしいやつ選んでほしいねー!」
「サンプル?おー・・(えっ5つもサンプル飲めるの?それでもうおなかタプンタプンにならない?むしろそれより今はご飯が食べたいんだけどモジモジ)」
「おすすめをください」
「妻・・!メシアよ・・・」
「おーけーおーけー!他には?」
「ご飯を!サムフード!プリーズ!」
「おー・・・フードね。メニューはこちらあるねー」
「おっけー!うわあどれも美味しそうだよミイホン!」
「うわあー。嬉しいねえ嬉しいねえ!私は、このサンドイッチにします!」
「俺も!トゥーサンドイッチプリーズ!!」
「オーケー・・・バット、ちょっとまってくださいね・・・。シェフがまだ来てないカラ、シェフに電話かけてみるからねー」
「え?」
「(電話中)ペラペーラ・・・ペラペーラ・・・オーウ!(悲しい顔)」
「え?」
「ゴメンネー。シェフ、今日は料理しないってーごめんねーフード無しよー」
「今日は料理しない!!」
「え・・・」
「いったい・・・どうして・・・」
「え・・・」
英語がうまく話せないのでよくわかりませんでしたが、とにかくその日にフードメニューが出せるかはシェフの予定(気分?)次第のようで、今日はコーヒーしかダメとのこと。
「素敵な景色だねミイホンさん」
「コーシーもとても美味しいよ」
「ハンバーガーの店、開くの待っててもよかったかな」
「ううん、この景色が見れてよかったよ」
「そうだよね」
「うんそうだよ」
遠い目で遠い景色を見つめる二人。
ノンカロリーのブラックコーヒーをずるずると飲み続ける二人。
その背中はきっと少し小さく見えたことでしょう。
その背中に、その時、神が声をかけたのです。
救世主
「ヘイお二人さん」
「はい?」
なぞの陽気な店員さんらしき人が、笑顔で話しかけてきました。
「料理が出せなくてすまなかったな。俺はこの店の畑で有機野菜とか作ってるんだ。もしよかったら、俺がここで育てた野菜と、ここで鶏が産んだ卵を使って、何か一品作ってやるけど、食べるか?」
「えっ!!いいんですか!?」
「ぜひおねがいしたいです!」
「オッケー!しばらく待ってな!無農薬の完全オーガニックな素材だぜ!」
人間追い詰められると謎の力を発揮するといいますが、なぜかこの時だけはすごく彼の言う英語が理解できました。
そして、しばらくののち、陽気な店員さんは料理を持ってきてくれました。
「ここで採れたハーブと、野菜と、卵で作ったんだ」
「う、うまそうー!!いただきます!」
ふうわりといい匂いのするスクランブルエッグ的な料理でした。
「!!!!」
「!!!!」
「めちゃくちゃうまい!!!」
多分おなかが減り果てていたのもあるし、景色がいい外で食べているのもあるんでしょうが・・・。
とにかくめちゃくちゃうまかった! すごく薄味なのですが、素材の味が濃厚に感じられて、一個一個の野菜と卵が主張しあって溶け合う。
「これシェフの料理食べるよりよかったんちゃう」
「本当だよ!!!生きててよかったよ」
「口にあったみたいでよかったよ。ハワイを楽しんでくれ!またな」
「ありがとう・・・ありがとう陽気な店員さん・・・」
その時我々の目には彼はまるで映画スターのようにカッコよく映っていました。生きててよかったです。
「よし!!これで体力も回復したところで!さらにドライブに戻りましょうか!」
「今度は私が運転するね!運転してみたいよ」
「えー?したいならしょうがないな(やった)」
ということで、次回はハワイ島のさらなる南に向かいます。 アメリカ最南端、サウスポイントでイコプ達が見たものとは!!? (牛とかです)